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***本物のトルコ石って?***

 

★本物のトルコ石ってどんなもの? 業界のプロでも定義が難しいくらい、トルコ石にはさまざまに処理されたものがあります。別の石を染めたり、色をまねたプラスチックなどの人工素材もあります。

(写真は昔からの当社コレクションの一部。全部本物ですが、処理の度合いは様々。)

 

 

当社が考える最も上質なトルコ石、それは、天然のトルコ石原石に処理をせず、カットした後に、ワックスで表面にコーティングをするものです。なぜワックスをかけるかというと、トルコ石は多孔質という、拡大すると微細な穴のある石なので、汚れなどがはいってしまわないよう、保護するためで、昔から行われていました。この処理は、本翡翠などの高価な宝石にもよく行われています。

 

下記写真は質の良い板状の原石が出ていた頃のスリーピングビューティー産の原石。厚みのないものが多いので、厚みを取るのが難しいのがおわかりいただけると思います。

色は『こまどりの卵色』と言われる明るい空色。

左手前3つが表面にワックス処理したルース。奥の15mmのラウンドカボションは、厚み約7~7.5mm あり、当社の製品として1999年当時に作成可能だった最大級の厚みを追及した企画品でした。実はワックスもそんなにかかってなくて、底面は原石の質感を残しています。

 

★処理をまったくしないトルコ石もない訳ではありません。生成の過程で、ガラス質というツルツルの表面になったトルコ石も昔はあったと聞いています。が、一般的には流通していないと考えられています。

ところで、当社にはワックスなしの、磨いただけのルースもわずかですがあります。 右手前のルースです。

上記のような昔とれた良質の原石を、当社の兄弟工場にカットしてくれるように出したら、カットしただけで、ワックスをかけずに送り返してきたのです。トルコ石にワックスをかけるのは専門にやっているところ以外は技術がないので、できなかったのです。結果は、ご覧のようにきれいな光沢の美しい仕上がり。多孔質を気にしなければ、昔のスリーピングビューティー鉱山のものはワックスなしでもよいくらい緻密な原石だったようです。

 

 

★石好きの本当の気持ちとしては、まったく処理なしがいいとは思うのですが、上記の事情により、これがベストかな、というところです。割ってみると、中は自然なままのトルコ石ですから、石の波動としては変わっていないと思いますし・・・。

 

★その他の天然トルコ石を使った処理で、宝石売場に並ぶものとしては、ステビライズド処理とザッカリー処理があります。 どちらも色が元の原石よりだいぶ濃くなる傾向があります。

 

 

ステビライズド(stabilized=安定化)は原石の段階で石の中まで樹脂を浸み込ませ、丈夫で加工しやすい素材にする処理、といっていいでしょう。中まで全部樹脂で固めてしまうので、もとのトルコ石をそのまま残したところはないですが、本物のトルコ石がもとにはなっています。 

 

実はこれが、日本の売場(宝飾売場から良心的なアクセサリー屋さんまで)で最も一般的に見かけるものでしょう。海外のお土産さんで買うものも、良心的なところならこのタイプ、そうでなければ似て非なるものの可能性も高いのがトルコ石です。

 

ただ、ステビライズ処理は、質の悪い原石も使えるようにできるため、もとの原石の希少性は本当にピンからキリまでです。

2021年時点でお客様から「最近、テレビショッピングなどで、スリーピングビューティーのターコイズで、スタビライズ、と書いてあるものをよく見かけます。とても大きくて色が鮮やかなものもあり、そのわりに安価なので驚きました」「なぜ、鉱山が閉山して貴重だといわれているものが、次々とテレビや通販で販売されるのだろう、しかも、大きくてとても青い…と不思議」というお問い合わせをいただきました。

 

スリーピングビューティー鉱山は一度2012年に閉山したのですが、その後また開いたと聞いています。閉山したのは原石が質・量ともに落ちたためなので、また採掘しだしたなら、かなりスカスカの原石を掘っていることになります。

 

昔は宝石売場用の希少性の高い原石の強度を高めるためにステビライズ処理を使った場合もあるのですが、樹脂で固めてしまえばどんな原石も使えることは使えるので、お安いものは、はたして本物のトルコ石と呼んでいいものかどうか。内容にはかなり違いや幅があると思われます。

 

ちなみに色ですが、無色の樹脂でも、もとの原石より濃い色になりますし、有色の樹脂を使えばさらに濃い色になります。

本来の天然トルコ石の良い色は「コマドリの卵」色と言われ、どちらかと言えば明るい空色です。

 

ザッカリーはザッカリー・トリートメントと呼ばれる処理方法でトルコ石を強くするもので、鑑別で見ると処理前と違う反応が出る検査方法があるので判別は可能です。色も元の色よりはだいぶ濃くなります。

 

この処理はザッカリーさん(James E. Zachery)というトルコ石の産地に育った科学者が1980年代の後半に開発したもので、企業占有技術のため具体的な処理方法は公開されていません。 中級品以上の原石にしかほどこせない処理だそうですので、価格的におそらく宝石売り場でしか見ることはないでしょう。(ザッカリー処理については一部「Gems&Gemology Spring 1999」掲載の「The Identification of Zachery-Treated Turquoise」を参照しました。)

 

★処理が少なければ少ないほど本物、と言うことでしたら、生の原石を磨いただけのトルコ石が一番本物ということになります。しかし宝石売場に並ぶ場合は、生のままのトルコ石原石を使ったものでも、最後にワックスコーティングはするのが一般的です。現在入手可能 な(というより不可能ではない、と言った方かいいかもしれない状況ですが) 最も本格的なトルコ石は、最後にワックスコーティングしただけのもの、しかもそんなにたっぷりではなく、なるべく表面だけに、ということになります。宝石用トルコ石の産地として有名だったスリーピング・ビューティー産のものでも、産出量が目に見えて減ってきた2000年以降の原石ですと、ワックスがスカスカの原石の中の方まで浸み込んでいる場合がある、と鑑別の先生からお聞きしました。

 

ナチュラルターコイズ はワックス処理のみの場合、肌にふれる箇所は、長く使用しているうちに汗や摩擦でワックスが取れ、天然のままのトルコ石になることがあります。その場合、多孔質と呼ばれる性質を持つトルコ石は顕微鏡レベルでは微細な孔があいており、そこに汗などが浸み込んで変色することがあります。宝石の本に、お守りとしてトルコ石を持っていたら、災難にあっても無事で、その代わりトルコ石の色が変わった(どっと汗が出たせい?)、というヨーロッパ由来のエピソードが書かれていることがありますが、それは天然だから起こり得ること。処理トルコ石の場合は色は変わりません。が、天然とは成分が違ってきます。まさに天然と言えるトルコ石を身近に楽しみたい場合は、天然のトルコ石ならではの、そのままの変化や風合いをお楽しみください。

 

 

***トルコ石って、どこ産?***

 

★トルコ石という名から、トルコで取れる石と思われがちですが、実はトルコでは取れたことはなく、昔、トルコ商人がヨーロッパに持ち込んだので、そう呼ばれるようになったそうです。それはペルシャ(イラン)とエジプトで取れたものだったようです。近年は、両国での産出はあったとしてもきわめてわずかで、一般的に流通しているとは言い難い状況です。

 

★現代にはいってからは、2000年頃までは、アメリカのアリゾナ州にあるスリーピング・ビューティーという鉱山から出るものが、一般的に入手可能なナチュラル・トルコとしては、最高と言われていました。アリゾナ州の砂漠には、いくつも鉱山があるのですが、その中でスリーピング・ビューティーだけが、黒い筋のない、快晴の空のような明るいブルーの部分が取れるような原石が、安定的に出てきていたのです。

 

★ですから、イギリスの有名貴族がトルコ石のネックレスを公式な場面でつけて世界に写真が配信されるようなときは、ここの産地のものだったはずです。

 

★当社もスリーピング・ビューティーを随分扱っていましたが、世紀の変わり目(つまり2000年前後)から鉱山がいよいよピークを越え、原石は小さくなり、産出量は減り、品質も落ちてきて、値段はうなぎ登りとなり、次第に扱う量が減っていきました。 そしてスリーピングビューティー鉱山は2012年に閉山しました。大卸の問屋さんに聞くと閉山は2013年なのですが、閉山後にスリーピングビューティーを訪れた人の話によると2012年ですので、最後の採掘が2012年、市場で閉山が確定した事態と受け止められたのが2013年だったのかもしれませんね。

 

★ちなみに、スリーピング・ビューティー鉱山の名前の由来は、山の形が女性が横たわっている姿に見えるところからきているようです。写真を見ると納得します。

(撮影: Bill Paul 氏) 

  ディズニー映画でおなじみの「眠れる森の美女」の英語の題名が「スリーピング・ビューティー」ですが、こちらは「眠れる砂漠の美女」です。

 

 ***トルコ石の希少性って?***  

 

ターコイズ(Turquoise)とも最近はよく呼ばれるトルコ石。 どんなものがいいとされているのでしょうか?  

 

宝石の観点から言うと、どんな素材でも、取るのが難しいレベルのものが、市場では高くなりがちです。 ですから、宝石によってその基準はちがいます。

 

★トルコ石は、一般に結晶が成長していくタイプの石ではなく、岩石の隙間にトルコ石の成分を持つ地下水がはいって、それがかたまってできるものです。 (砂漠でできる宝石なのに、水がその生成にかかわり、水色をしているのが面白いですね。)  岩石の隙間というのはあまり厚みがない場合が多いらしく、スリーピング・ビューティー産のものは、4mm以上の厚みを持つものは取りにくく、値段にも影響しました。 ですから、面積のある石でも厚みを取るのが難しく、また、丸玉のようにあらゆる方向に厚みが必要な形は、4mm以上は取りにくく、大きくなればなるほど贅沢な貴重品ということになります。

 

★一般に「ネット(網)」と呼ばれるトルコ石の筋は、岩石の境界線です。きれいにはいっているものは、それはそれで人気があります。でも偽物が多いので、注意が必要です。

 

 

 

***トルコ石 マメ知識***  

 

以下のお話は、日本でも有数の鑑別家である飯田孝一先生の「天然石のエンサイクロペディア」をもとに構成させていただいた内容です。

 

トルコ石は有史以前から世界の多くの文明で装飾用の目的で採掘されていました。

 

『中東、アジア、南米などが産地として知られ』ていますが、空の色を連想するためか、どの地域でも『例外なく"天の宝石"とされ』ました。中東では『宇宙観のある宝石「ラピスラズリ」と組み合わせて用い』ることも多かったようです。アジアと南米大陸では「血」を連想させる『「赤い珊瑚」とトルコ石を組み合わせ』ることが多かったようです。配色としても印象的な美しさかもしれませんね。『アメリカのネイティブ・アメリカン(インディアン)にとっては特別神聖なもの』で、祈りをささげるときに使ったそうです。

 

『古代の人々が、この宝石に力が宿ると考えたのには理由がある』、と飯田先生はおっしゃいます。

 

『トルコ石は、地下水に溶けている成分から微細な結晶粒が集合した形で誕生する。したがってその結晶粒の間には常に水分が存在している。(中略) トルコ石は地中から採掘されるとたちまちその水分を放出して乾燥する。中央アジアのアステカ族は、この宝石には魔力があり、持ち主に危険が訪れると色が褪せると信じていた。原石のままでも、カットされていても、この宝石は、それを所持している人がしょっちゅういじっていると、採掘時に水分の蒸発によって生じた結晶粒の隙間が人の手の油を吸収して、次第に生き生きと透明感を増してとても美しい宝石に変化してくる。この辺りの変化の状態がとても神秘的に感じられ、おそらくは人知の及ばない世界のものと捉えられたのだろう。 しかしそれもこれも、この宝石が構造上で持っている結晶粒どうしの空間がなせる業である。』 (「天然石のエンサイクロペディア」飯田孝一著、 ㈱亥辰社 2011年発行)

 

★人間の手の油で光ってくると同時に、自然の汚れもいっしょにはいったでしょうから、それも含めてのナチュラルな表情ではあったことでしょう。

 

★自然の中から特別な魅力を感じる石を選んで愛でる行為は、どの文明でも太古の昔から一般的な行為だったようですね。トルコ石はその筆頭の一つとして、とても歴史が長いようです。

 

                                                                          (引用等はご一報ください)

 

 

   ★スリーピングビューティー産ナチュラルターコイズにご興味のある方は

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